自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

さて、今回は自閉症スペクトラム障害の方を理解しようという記事になります。
ASDの人たちが本当に傷付くことは何なのかについて、
その障害の特徴を踏まえた上で明らかにしていきます。
「ああ、あの子は自閉ちゃんだから空気読めないのよ」
とか、
「こだわりがあるから発達障害かもしれない」
とか、
少しかじった程度の知識があるゆえの、変な誤解が横行していますよね。
ちょっと知ってるくらいが一番危険です。
ASDの人にもASDじゃない人と同じように傷付く心があります。
実際現場にいる人であっても上のセリフのようにASDの人たちに適当にレッテルを貼って
"型にはめよう"とする人の多いこと多いこと!
そんなの、「貴方はB型だから自己中なんだよ」と決めつけられるのと何ら変わらないです。
本当に、専門家と言えるような人たちが平気でそういうことを言ってましたね。
発達障がいや知的障がいの方たちの支援をする側の人間として、最低限彼らの特徴を抑えた上で、
彼らは何をされたら嫌なんだろう?ということについて考えていきましょう!
コミュニケーション能力の違い

まず、はじめのASDの特徴ですが、
コミュニケーションがかなり独特なんですよね。
これを理解していないと、半端なくすれ違います。
『ああー死にたい』とか発言しようものなら
必死で「えっ!?ダメだよ死んじゃ!!」と止められてしまいます。
想像力の欠如
コミュニケーションが苦手な理由として、相手の気持ちを想像する力に障がいがあることがあげられます。
暗黙の了解というような、
"あえて言葉にしなくても分かってくれるだろう"
というのは通用しないのです。
サリーとアンのテスト
これを推し量るのに有名な"サリーとアンのテスト"というのがあります。
「なぜサリーとブラウンじゃないんや!」
とLINE世代は思うのかは知りませんが、これは発達障がいを判定する際に使われる心理テストのようなものです。

さて、上の図を少し見てみてください。
詳しい解説はググればいっぱい出てくると思うので端折りますが、
ASDの人はアンが移し替えた後に入れた方を、サリーも開けるだろうと考えます。
すなわち、
サリーの状況に立って考えることが出来ない
のです。
「えっ!めっちゃ簡単やん!」
と思ったかもしれませんが、"相手の立場に立って想像する"というのは脳の機能の一部です。
私たちのほとんどが、"29856 × 235 = "を暗算で計算するというのが出来ないように、ASDの人はこのテストが出来ないのです。
そもそも、私たちでも常に相手の立場に立って振る舞えている人は少ないですけどね。
とにかく、ASDの人達にはこういった脳の機能障がいがあるということだけ、ここでは分かってもらいたいです。
言葉は話せたり話せなかったり

さて、次にASDの人の言葉の問題についてです。
言葉の獲得という面で、ASDの人は遅れがちです。
ただ、遅れながらも言葉が話せる人もいたり、言葉をむしろASDではない人よりも流暢に繰り出す人もいます。
どちらにしても特徴的ではあるんですが、
肝心なのは、"言葉の有無でASDかどうかの判断は不可能"ということです。
また、ASDの言葉の操り方として、おうむ返し(=エコラリア)というのもよく見られます。
ASDの人が司法の場面で誘導尋問のように無実の罪を着せられるとかいう弊害を引き起こしています。
検察官『お前がやったんだな?』
ASDの人『お前がやった。(おうむ返し)』
みたいな感じで、罪を認めてしまったりします。
ここでは深くは触れませんが、司法の領域での発達障がいの認知度を深めることは急務です。
また、一般的な問題として、流暢に言葉を操るASDの人に対して『普通の人やん』と思ってしまいがちなんですが、
想像力の欠如などから突飛な解釈をされ、ちぐはぐな振る舞いをされてしまい、
結果として『変な奴。。』というようなレッテルを貼ってしまうのです。
少しわかりにくいので例をあげるとしましょう。
上司『(Aさんに対して)誰かさんのせいでプロジェクトが台無しになったよなぁ。』
Aさん『えっ!誰のせいなんですか?!』
Aさんは"誰かさん"を言葉のままに受け取っており、自分のことを指していることに全く気づいていません。
このように、言葉の有無だけで彼らを判断することは出来ないのです。
日本は障子の文化と言われていますが、
『みなまでいわず、後は察しろ』というコミュニケーションはASDの人には全くの異文化であるということです。
ASDの人が言葉を一見器用に扱うのは不思議に思いますよね。
言葉を気持ちを伝えるツールではなく"相手不在で""物のように"扱っているのだと私は考えていますがこの辺りは深い問題ですのでまたいずれ考察します。
とにかく、言葉を操れないのではなく相手の立場に立つことが苦手だという認識を持ちましょう。
切り替えの苦手さ
さて、次のASDの特徴は『切り替えの苦手さ』です。

"今やっていること→次の活動"
これがかなり苦手なんです。
テレビ見てるときに、お母さんに
「お風呂沸いてるわよ!早く入りなさい!」
と言われると妙に面倒臭い・・・
私たちでも結構あるあるなことなんですけども、
ASDの人はもっと面倒臭く思えてしまうんです。
もちろん、ただのめんどくさがりなわけではないですよ。
『巻き戻し現象』

この切り替えの苦手さから起こってくるのが"巻き戻し現象"です。
巻き戻し現象とは、
『同じ行動を始めから、もしくは途中まで戻ってもう一度繰り返すこと』です。
例えば通学路でいえば、"もう後少しで学校だ!というところまで来て、
前の信号まで戻って、もう一度渡り始める"
だとか、
外出の時に"上着の羽織り方が気に入らずに脱いでは着てを何度も繰り返す"
だとか、例を挙げだすとキリがないんですが、そんなニュアンスです。
一見して『はよせえよ!』と急かしてしまいそうになるこの行動なんですが、
これも『切り替える』という脳の機能の欠損が原因なんですね。
・私たちが当たり前のように出来ている行動は全て脳の一部がフル稼働しているから出来ている
このことだけは何度も繰り返して、言わねばなりません。
さらに、切り替えの苦手さからくる行動がもう一つあります。
『こだわり行動』

もはや有名になっていますがASDの人たちは『こだわり』がものすごく強いという例のヤツについてです。
これについてはもはや皆さん知ってるだろうし、例をあげるまでもないとは思うんですが
一応今回は特徴をおさえた上で、という前提なのでさらりと復習しておきましょう。
よくあげられるのは、調味料を背の順に並べたりするヤツですね。
あとは、いつもあるものの場所が変わっていたりすると怒り出す、とかですよね。
だからあるASDのお子さんを持つ家庭ではずっと乾いても傘を干し続けてあるとか。
もう一つは"儀式的な行動"ですかね。
イチローはASDかは知りませんけど、『バッターボックスに入って投球が来るまでに、"右肘触ってバットを回す"ことを"絶対に"やる』というのは良い例ですね。
イチローの場合はこのルーティーンを集中を高める契機としているという理由のようですが、
ASDの人の場合はまた違った理由があります。
『巻き戻し』や『こだわり』は切り替え時に不安を軽減する行為である

私たちは"未知の状況"を不安に感じ、対して"いつもと同じ状況"には安心しますよね?
それは何故かと言えば、何が起こるのか分かるからです。
未知の状況では何かが襲い掛かってくるかもしれません。急に誰かに傷つけられるかもしれません。
それは人類皆共通の感覚です。
でも、普通は今の状況というのを私たちは大体把握しているものです。
今日は何時から会議があって、大体何時には仕事を終えられるだろう、とかいう風に。
しかしASDの人たちは次何が起こるかを把握することが難しいのです。
そのために出来る限り自分の把握出来る状況を自ら作り出して安心しようとしているんですね。
そういった彼らへの支援の一つとして、以前にスケジュールの導入についての記事を書きましたので、またご参照頂ければと思うのですが、
方法論ではなく、
彼らが何を感じているのかを理解することが大切である
ということこそ、今回私が声を大にして言いたいことなのです。
決めつけられることがいちばん辛い!
さて、ここまでASDの人の代表的な特徴をあげてきました。
これらの特徴を知った上で、ASDの人のサポートをしていくわけですが
最初にお話しした通り、支援の現場で多くの勘違いが発生しているんですね。
例えば"コミュニケーションの特徴"で言えば、しがちな勘違いは
『ASDの人はコミュニケーションが嫌いなんだ』
というようなものです。
確かに"苦手"なのかもしれませんが、
それは"嫌い"だということにはならないんです。
実際にたくさんの発達障害の人と関わってきて、思うのは
彼らはものすごく人に認めて欲しいと思っているということです。
コミュニケーション自体は好きだし、人との関係性の中に自分の価値を見出すことは
障害云々関係なく、あらゆる人に共通して必要なことですよね。
せめて傍にいる人にはその気持ちを認めてあげて欲しい。
そして彼らが本当に必要とされるような人間になるように導いてあげて欲しいんです。
彼らが好きなことを突き詰め、そこから自然とコミュニケーションの大切さに、
自ら気づいていく。そして人との関わりを拡げていける。
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もしよかったら引き続き読んでみて下さい。
今回は以上です。
お読みいただきありがとうございました。
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