よく、実家とかに帰るとすごく惨めな気持ちになった。
それは自分とは違って根をしっかりはった大木がたくさんある森のようなものを自分の生まれ故郷の人たちに重ねて見ていたからだ。
自分で決めたこと、やりたいこと、そういったものたちで今までずっと続いてきたものは何一つとしてない。
自分に授かった子どもですら面倒を見ることを三年にして放棄した。
そんな自分が、実家だけじゃない。
いろんな地方に行ってそこに根ざす文化、暮らす人たち、昔からそこにたち続けている建物。何百年も欠かさず行われている祭。
そういったものに出くわした時
人間は、みんなあんな風に、地面にしっかりと根を張って倒れないようにその幹・枝葉を伸ばし続けその地に育ち続ける。
ということに直面させられる。
それに比べたら、自分はせいぜい脱脂綿に落ちたもやし豆のように少しだけ脱脂綿に根を張ってある程度経ったらそれを引きちぎってまたどこかへ飛んでいく・・・
そんなもんだと感じられるのである。
しかし、そんな劣等感みたいなものはむしろ些細な問題でしかなかった。
それよりもさらに自分を絶望に追いやってきたのは、
そうやって大木・森にまで育った、きっと元は自分と同じようなタネの未来の姿を見たとき、全くそれに興味のかけらもわかない自分がいた、
ということの方だった。
なぜそんなに同じところで、疑いもなく根をはれるんだ?
そんなに育ってしまったら、抜いた時にもう再起不能じゃないか。
そんな風に思ったから、というか、思ったとかのレベルではない。
「わかった」からだ。
それでも何かを極めたいと思ったことは何度もある。
ハマった格闘ゲームをやり込んだ時、どうしたって届かなそうなくらい本気でやり込んでる人たちがいて、けちょんけちょんにやられた。
その頃には自分がモチベーションを保つために環境を変える必要性に気づいていた。
だから、世界の大会に出ているような人たちの家に行って彼らと1日に5時間とかぶっ通しで戦ってもらった。そしてそれなりに強くなっていた。
しかしものすごい虚しさが痛烈に、彼らの家に向かう路上で襲ってきた。
『何してんねん俺は・・・』と。
この頃には費やした時間たるや相当のものだったと思う。1,000時間どころではない。そこで急に冷める。
そうなるともう、同じ家に通っても、急にその部屋も人もゲームもカラーを失う。セピア色になる。『もうここはあなたにとって過去のものですよ』と語りかけてくるように。
でもすぐにはそれを聞き入れられない。
気の迷いだ、もう少し続けていればまたやる気が戻ってくる、と自分に言い聞かせて
1〜2ヶ月粘る。
その時は地獄である。
もちろんカラーが戻ることは二度とないのである。
2〜3年付き合った彼女に対しても、この人と寄り添って生きていくんやと純情ボーイさながらに決意し、それなりに本気を出して色々と信頼関係を築きあげるために夢中になってやっていた。
しかし、それは突然にやってくるのである。痛烈に冷める例のやつが。悪霊でも取り憑いたのかと勘違いするほど急に。
『あれ俺は一体何をしてるんだ』
そして別れる。自分に備わった無駄に厚い情けぶかさを引きちぎって。この時こそ脱脂綿に根を貼りかけたもやし豆を引きちぎるイメージにそっくりだ。
もちろん泣くなんてもんではないダメージを被る。
別れる寂しさももちろんあるがそんなものより10倍感じるのはなんでみんなこんな無意味なことを続けて幸せそうに笑っているのかという疑問と孤独に対してである。
親友と思える人についてもそうである。小中高大と非常に親近感を持ち、尊敬できる友人がいつも近くにいてその人と一緒にいた。
でもやはり急に興味がなくなる。
誰一人としてそういう人で今でも関係を持っている人がいない。
時々SNSで見かけたりする。
その時いつも思う。
「まだそこにいるのか」と。
あれれ、ひょっとして、俺は人間として欠陥品なのかな?
と思ったことは一度や二度の話ではない。
でも今は思う。
俺の方が正しいと。
正しい、正しくないの話ではなく、一人ひとり違って大丈夫、みたいなニュアンスのこともよく言われることだがそんな生易しいもので表現することはとうてい不可能である。
圧倒的に、俺の方が正しいのである。
積み上げるものの大切さ、ずっと続けることによって得られるもの、信頼、責任、文化・文明。
色々と反論もこれまでの33年間で考え続けてきた。
常人の500倍は考えてきたのである。
それでも、思う。俺の方が正しいんだと。
長く続く文明はいつだって滅びているじゃないか。
人間はそのうち死ぬじゃないか。
津波や地震は定期的にやってくるじゃないか。
根を張る場所は、脱脂綿くらいでちょうどいい。だって、引き千切れなくなるからね。
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